02――――東水原野球部の『特色』






























ここは東水原学院高校。

『超』が付くほどの文化高校で、その実績は輝かしい物だ。

しかし運動部は『超』が付くほどの弱小で、常に一回戦負けが普通である。

東水原高校の野球部の戦績は過去10年間の夏の大会では初戦敗退9回(うち9回が五回規定コールド負け)、

※一度だけ相手の棄権で勝利しかし次の試合は2対13の5回コールド負け。

秋の地区大会は地区予選通過さえない、春の甲子園の出場を目指す関東大会出場なんて言うのは当然1回もないわけで…。



去年秋の予選大会の敗退の理由はエースの不在に内野陣の守備の乱れ等。

相手も弱小高だったが3対14の五回規定コールドで敗戦。

西東京に位置するこの高校は強豪高校ひしめく関東の前では常にランクでは最下位のEランクに着けられてしまう。



だがそんな野球部にもおもしろい『特色』があるが、それは話の続きで。

そして2005年4月、各部活には『新入部員』という即戦力になる物と晩熟型が入ってくる。











それは弱小野球部にも、その対象はいるわけで…















志田「なっ…お…おい…城所…?」


城所「…………わりぃ、ちょっと喋りすぎた」


城所の発言を最後に部室の前で黙って立ち尽くす二人。

険悪なムードだったが、二人はこういうことはたまにしか無いので回復の糸口が見えない。



ガチャ…



部室の前に立っていた二人の耳にはガチャという音。

つまり部室のドアが開いたわけだが…




「お、まさか新入部員か?」




恐らく野球の部室から出て来たのだから野球部の部員の人なんだろう。

ユニホーム姿で登場した青年。




志田「はっ、はい…一年三組の志田拓也です!」




城所「…同じく一年三組…城所聖也っす…」




いきなりの登場と挨拶で一度意表をつかれるが直ぐあいさつを返す。

険悪のムードの中を断ち切った所でタイミングのいい人なのか…悪い人なのか?



宮野「ほーデカイなぁ〜お前等、俺はキャプテンの宮野幸太(みやのこうた)ヨロシクな…」



正直でかいなと言われてもあまり嬉しくは無いだろう。

184の城所と、186の志田とも…宮野は



同等の大きさだったからだ。



宮野「まぁ丁度良かった。はいこれに拇印押して」


二人の前に紙が差し出され親指で紙を押してという宮野のジェスチャーが伝わり…











ペタッ…ペタッ

















二人は訳も解からず宮野に差し出された紙に拇印を押した。


宮野「は〜い入部おめでとー」

城所&志田「はっ!?」


宮野手には入部届けに名前と拇印が押してある物を突きつけた。

先程自己紹介のときに名前を言ったのが運の尽きだった。

名前の通り書いたから平仮名で書かれてある。



志田「元々入るつもりだったのに……卑怯な…」



宮野「ん〜だって万一に引き抜かれちゃうかもしれないし、それに…」

城所「それに?」



宮野は首を隣の部室の方に向ける。


東水原高校は全校生徒の三分の二が文化部に所属して新入生もそこに消える。


残り三分の一の新入生を巡る運動部の争奪戦が始まる。



サッカー部「えっ!君サッカー部に入りたいのかい?解かった一緒に国立めざそう!」

ラグビー部「何言ってんだ!この子は僕達と一緒に花園目指すんだよ!!」

その他「国体に…東京スタジアムに…」



太った男子「わ…わでは相撲部に入…ぎゃあああああああぁぁぁぁ」



そして常に血の雨と涙とかが降るらしい。

しかしどれも所詮廃部を免れようと必死にやってるだけで…



城所&志田「あざーしたー」

宮野「まぁ入れよ今から自己紹介だ…」



感謝を絶え間なくした二人であった。

三人は部室の中に入って行った。





部室はさほど狭くなく居心地の悪い場所ではない。

ロッカーにソファーと黒板に野球道具が並んでいる野球部らしい部室。

少し奥に行くと先輩方も何人か居て、新入生も既にいた。(何人かは強行らしいが…)



ちなみに一年は七人で二年が六人三年が五人らしい。



「あ〜じゃあ自己紹介からなぁ〜@名前と学年A身長体重B希望ポジションで全員説明するから〜まず一年のA組から」

その答え方はレースクイーンのオーディションかい! とか思ったがさすがに口には出せなかった。

キャプテンと先輩達は黒板の前に立って新入生はソファーの前に立った。


加瀬「一年C組の加瀬信吾です(かせしんご)163/53ポジションはファーストです。よろしくお願いします」

パチパチパチ〜


余談だが先輩達はその身長でファーストかぁ〜とコソコソ言っていた。



そして4人目になり…



志田「一年C組の志田達也です。186/65ポジションはピッチャーです」

先輩「うおおぉぉウチにもエース級のピッチャーが来たか?」



やはりピッチャーは背が高いと有利らしい。

先輩達も喜んでいる、無論志田は照れているが…



次は…俺か、自己紹介とかあんまり得意じゃないんだが。









城所「一年C組の城所聖也です。184/75ポジションは…」


















多分『例のポジション』が1番輝ける。













でもあのポジションは『アイツ』の…














天才と呼ばれた…













『アイツ』との唯一の共通点の場所…








城所「……ポジションは…ショートです。よろしくお願いします。」





パチパチ〜





この発言に驚いたのは志田だった。

初心者ならば外野が無難だろう、ショートは一番野手の中では1、2を争う難しい場所だ。



おそらくカッコイーからだろうなと思って選んだんだと志田は判断した。

志田(城所にとってみれば野球の内容なんてどうでもいいんだろうな…)

悲しい顔をする志田。



そして一年の最後自己紹介。

赤丸「一年C組の赤丸裕也(あかまるゆうや)です。188/85ポジションはサードです。」



一年最長の身長だった。



志田は何故か聞いてビックリ見て悔しがったりしてた。

所詮2cmだったりだからいいじゃんと思ったりもしたが、俺と志田も2cm差だから何ともいえなかったり。



そして二年の紹介だったが特に目立った人はいなかったが、身長185cm外野トリオとか言ってた人がいた。石堂、石川、石山さんでした。



石堂、石川、石山「カットかよ!?」



次は三年の先輩。


「三年一組副主将の浦和智樹(うらわともき)193/90ポジションはキャッチャーまぁ気軽に越えかけてくれや」

デカイ、先輩は勿論だか何故この野球部の7割が180を越える身長なんだ?



「三年二組主将の宮野幸太だ185cm/77ポジションはセカンドだ。よろしくな」

オールバックのキャプテンだが、何故かカッコ良く見える。

勿論先輩もデカイ。


お気ずきの方も居るかも知れないがこの野球部の『特色』それは身長である。

実はこの野球部の平均身長は全国で1位の輝きを保っている。


まぁ身長だけだが…

そして三年の全員の自己紹介が終わり…



宮田「自己紹介が終わったな。よし、外に出ろ野郎共ーー………」



自己紹介が終わるとキャプテンは叫んだ。

外に出て一体何をするのだろうか?















宮野「1年&3年対2年&3年で試合だあああああぁぁ…こほん……そしてこれがオーダーだあああぁぁー」





―――――1年&3年―――――
1番 三塁 赤丸 @年
2番 中堅 戸野 @年
3番 遊撃 城所 @年
4番 右翼 石竹谷 B年
5番 捕手 浦和 B年
6番 投手 志田 @年
7番 一塁 加瀬 @年
8番 二塁 石井 @年
9番 左翼 村田 @年

―――――2年&3年―――――
1番 一塁 吉田山 B年
2番 三塁 吉井 A 年
3番 二塁 宮野 B年
4番 捕手 只野 A年
5番 遊撃 武山 A年
6番 右翼 石堂 A年
7番 中堅 石川 A年
8番 右翼 石山 A年
9番 投手 黒井 B年