13――――約束
新しい月が出始める頃…
暖かくなろうとしている六月には、冷たい風が吹いていた。
城所「…なんだ、だから志田は…」
志田の過去を苦しそうに話す城所。
坂原「そんなの…迷惑よ…」
首をフルフル回す坂原、必死に否定する。
その言葉を聞いて恐らく覚悟していただろう言葉を言われる。
坂原「そんな、果歩自身を死んだ人と重ね合わせるなんて…サイテーよ!!」
城所「お前…人殺したことあるか?」
突然の質問と質問の無いように驚きを浮かべる坂原。
城所は構わずに続ける。
城所「志田にしてみれば殺してんだよ、佐々木雪穂ってゆー女の子を見殺しにしてるんだ
…」
必死に論を述べる…坂原はそれを否定できない。
坂原「そんな…だって…」
城所「一度死んだ人間が戻ってきたって言う言い方は失礼かもしれない、だけど志田には
もう頼りが無いんだ…那珂川にしかもう、頼れないんだ!」
そんな時志田と果歩はヒョコヒョコと現れた。
果歩は多少顔がすぐれなく志田に肩を貸してもらって歩いている状態。
坂原は志田から直ぐに果歩を取り返し抱きかかえる。
そのまま1人は不穏な表情を、もう1人は笑みを浮かべては帰って行った。
城所「なぁ、この場所に連れてきたって事は言ったのか?」
二人が立ち去った事を確認して志田に尋ねる。
志田は頬を欠いて首を縦に振った。
城所「過去の人を今の人に重ね合わせるなんてサイテーよ…って某空手家に言われたんだ
けどな」
いくら志田でもこれは解かった。
その時坂原に自分の過去を喋ったと悟り、その上で怒りは無く城所に本音を伝えた。
志田「俺さぁバカだから解からないんだよ、自分の気持ちも相手の幸せを考える事も…」
その時気付けば良かったと思う。
昔誰かに聞いた言葉だと思っていたものは… 自分自身が思い描いて作った言葉だと…
志田「だから約束しちゃったんだ甲子園連れてくって…」
城所「返事は?」
志田「…うん!…だって」
その時気付けば良かったと思う。
1年前に聞いた言葉と違っていて安心した俺は…
果歩の全てを知ってなどいなかった事を…
俺達の高校生活で最初の夏が始まった。
希望と絶望、勝利と敗北その二つの『希望』『勝利』を得るために全国の高校球児が戦う
。
でもその夏は俺達の最初で最後の夏になろうとは…
だれも知るよしは無かった。