01――――今日から高校野球児だぜぃ、てか『ぜぃ』いらねぇー。
公立東水原学院高校。
過去に吹奏楽部が全国制覇を残し美術では有名画家を排出している超有名文化高校で、美術推薦等の待遇がある位だ。
しかしスポーツはバスケ、ラグビーなどなど一回戦負けが当然である。
もちろん野球部も例外ではない。
「まぁ、俺も物好きだょなぁ〜」
この男の名は城所聖也(きどころせいや)
身長は180を越える長身だが太ってはいない、かといって痩せてもいない。
多少茶髪に染めた髪が目立ち顔にあどけなさを感じる。
なんとも解かりにくい少年である。
廊下に立ち止まっていた城所は歩き出すが、すぐに止まる。
城所「志田ーー行くぞ!」
そして城所は後ろで慌ててカバンに荷物を入れている志田拓也(しだたくや)に声を掛けた。
志田「おーい頼む一分だけ待って〜」
そんな声も虚しく城所はさっさと先に行ってしまう。
志田は赤いバンダナの黒髪で腕にはリストバンド、胸ポケットには常に携帯を忍ばせてある。
いわゆる現代っ子である。
この男は痩せ型だが身長は城所より高い。
なんとも解かりやすい少年である。
志田は荷物を整理すると城所の方にかけていった。
志田「ったく、ちょっとは待てねーのかテメーは」
自分の持っている手鏡で自分を見ながらヘアバンドを整え低い声で城所に話しかける。
城所「俺の辞書には『待つ』と言う言葉無い! カワュィ子以外は…」
志田「さいですか…」
もはや突っ込む事を諦める志田。
どうやら年がら年中のボケっぷりで毎回突っ込むと体がもたないらしい。
そして二人が並んで歩き出すと周りがザワザワと騒ぎだす。
城所、志田の二人が並ぶと異常な威圧感を発してしまうからだ。
それはそうだろう、二人の平均身長1m85cmだ(城所184、志田186)この身長でうろつかれたら誰だって怖がるだろう。
二人は全く気にはしていないが…
志田「所でお前何部に入るの? 前みたいに陸上部?」
城所は中学校では陸上部に所属していたらしい。
志田「俺は中学と同じ部活だけど
…」
…………。
城所は返事を返さない。
今は学校を出て校庭にいる状態だ…
そして城所の歩幅が徐々に大きく歩く速度も早くなる。
志田「お、おい?」
城所「……………」
スタスタスタスタスタスタスタスタ…ピタッ!
城所と志田の二人はあるポスターが貼ってある部室に止まる。
城所は二ャっとして志田は驚きの表情でそれを見た。
━━━━野球部員大募集!君も入れば立派な高校球児だ!青春と夢そして甲子園をつかもうぜぃー━━━━
つーか最後の
『ぜぃ』いらねぇ〜と思ったりもして。
しかし志田はそんな事よりもある疑問に引っ掛かった。
志田「てか、お前が野球!? あんなに嫌いだったじゃねーか?」
城所はニャニャしながら志田の質問に答える。
この質問が城所がどれだけプライドの無い奴だか思い知る事になるのだが。
城所「時に志田君?プロ野球の最高契約金はいくらかね?」
城所の質問に何の疑問も無く答える志田。
志田「えっ、そりゃ…一億で…」
城所「そーなんだよ! プロ野球選手になれば億単位の金と女子アナと結婚できる可能性も増えるし老後も指導業で安泰で子供に夢も与えられる! こんな素晴らしい職業があるか?」
欲欲欲の塊で作られている男であった事が証明された。
もしプロ野球選手とプロ野球選手に憧れる子供がこの小説に目を通したらスイマセン、城所の勝手な妄想です。
そんな中で志田は肩と腕を震わせて唇を噛み締めていた。
志田「ふざけんなよ…」
城所「あっ…!?」
バキィッ!!!
城所「…っ!?」
こられきれない志田の拳は城所の顔面にめり込んだ。
志田は顔をこわばらせて城所に怒鳴っていく。
志田「野球をバカにすんじゃねーーーー!!!!」
先程のチャラチャラのイメージを払拭させる様な熱さだった。
志田は小学中学と野球部に所属し野球だけは情熱を冷やした事は無かった。
だから親友であろうと城所の野球を軽く見る発言にはどうしても許せなかった。
城所「…バカになんか……してねぇーよ」
城所は殴られた所に手を当てて言葉を返す。
しかしそんな反論では志田の心はおさまりきらなかった。
志田「してんだろ! お前みたいに野球素人がプロ野球選手だと笑わせんな、お前なんか野球やる資格なんかねーんだよ!」
バキィッ!!!
志田「…っぁ!?」
今度は城所の拳が志田の顔面を捉えていた。
城所「俺は野球をやる…そしてプロになる。」
喋り方が片言になっている城所にも怒りの志田には気付かない。
また野球を軽く捉えた発言に志田は怒った。
志田「ざぁけんな! 所詮は金目当ての野球だろーが!」
城所「…あーそうだ…それもある……」
城所「そして野球をやらないままじゃ『あの人』にも…会えない……それに…このままじゃ…母さんが…死ぬ………」
