第三話『化け物の正体』
「5回の裏…8対3」
とそこには圧倒的な強さが数字で表されていた…。
グランド内がざわめく、その練習試合を通行人は確認した時には、またたくまに噂が広がって行く。
ボールが大空へ吸い込まれるように高々と上がる。
太陽と丁度、重なる位置から落ちてきたので外野手にはかなり、難しいフライである。
「あっあっっ!!落球だっ!!突っ込めー!!」
それは悲鳴のように聞こえた。
かなり力のレベルがあるところ同士の試合らしいことが状況から読み取れる。
「ホームイン!!これで10点目だー!!」
悲鳴と歓声の中、圧倒的な強さを見せているのは、琉球付属だと思いきや何と、宜野座と言う聞いたことのない高校の名前であった。
「ばかやろう!!何あげてるんだ!!!あんなんじゃあ!!!1軍には到底勝てないぞ!!林っ!!次、同じ打球を打ったら予選はスタメンを外すぞ!!肝にめいじておけ!!」
監督の怒鳴り声が聞こえてくる。
周囲はおいおい贅沢言うなよ。
相手は2軍とは言えあの琉球大付属だぞと言う雰囲気であったが宜野座と言うチームは琉球の2軍とはいえ、7点差もつけるのは他校との試合では楽勝ムードになるんだろうなと思った。
楽勝どころか大リーグ対草野球と言ったレベルの対戦になるのだろうと違いないと人々は思った。
そして9回の裏ついに全員ベンチに待機していた。
琉球付属の“レギュラー”すなわち“1軍”が全員残らず交代して、各個人の守備位置にそれぞれ散って、行った。
メンバーはいつもテレビの選抜大会などで見るメンバーが殆どで春からの新入部員が2人ほどいた。
いわゆる、新メンバーである。
メンバーは…恐怖そのものと言う感じである。
と言う具合に最強の不軍に変わった。
それからと言うものの宜野座のエースは火達磨になってしまい気がつけば8回表の無視満塁で10対9であった。
バッターは残酷な運命を辿ってしまい、何と打席には、この回に反撃ののろしをあげるきっかけとなった松坂!!
彼の内野を鋭く抜ける打球は人が当たれば、命に関わるとまで言われているので皆、逃げ腰になってしまう。
その松坂の弾丸ライナーを今の宜野座に止められる程の人材はいないはずである。
第1球はアウトコース低めのカーブでボール 打者・松坂も見逃すがこの見送り方はかなり余裕がある見送り方であったためボールで打ち取りに行くと言うよりは、ピッチャーからしてもキャッチーからしてみても投げざる終えない球であったに違いない。
そして内へ外へ外へ内へと散らしていくが、松坂はぴくりともしない堂々と余裕を持って見逃していた…そして!!
カーンとすさまじい、金属音から打球は深々と破る外野への打球となったが遊撃手が必死にとめようとしたが、打球の速さと重さにグラブが弾かれて、手を押さえながらその場に倒れこんだ。
「ホームイン!!2人生還!!!これで11対10逆転だーーー!!!!」
周りが騒ぐ中、宜野座の内野手は凍りついた…。
遊撃手の左手首がプランプランと宙吊り状態になっている事が解ったからだ。
さっきまで余裕をこいて威張っていた監督も慌てて、担架を用意させた。
「おっ!!おい!!大丈夫か!!おい!!林キャプテン!!練習試合なのに洒落にならないっすよ!」
ナインが心配そう人駆け寄るが、林はその場に倒れこみ、数人の手により担架へ持ち上げられて球場を救急車で去っていった。
これが練習試合かとばかりに、凍りつく宜野座ナインしかし、無常にも試合は続く…
バッターは3番の選抜大会で6ホーマーを放った大砲!鍋島!!
「ちっ!!2軍に余裕で勝ってからと言って、勘違いされたらたまりませんからね」
優等生で嫌味たっぷりな口調で喋る鍋島は、明らかにプライドを傷つけられていた事で闘志がいつも以上に増していた。
その鍋島を止められる奴は誰一人いない、宜野座の150キロをマークするエースですら参ったと表情だ。
「練習試合だ…松橋だがこの回に限り、何点取られても構わない、そうでなければ本番はこいつらと対戦することになるのでそれこそ精神的に死んでしまう。」
松橋はダイナミックなフォームだがその時ばかりは弱気に見えたフォームから第一球を投げた…。
「入ったーホームランだーー!!」
これで14対10!!と言うスコアボードになり、最終的には25対10と言う得点で練習試合は幕を閉じた。
『那覇高等学校校内新聞!作者・3年J組元木大輔新聞委員・部長』
パソコンのワードで作ったと思われる浮き彫りな文字の題名に内容が書いてある。
『25対10で琉球大付属が快勝!!謎の宜野座高校も完敗!!!!』
新聞を見れば誰もが、圧倒されて一度目を通せば忘れないくらいの凄いインパクトを出していた。
流石、新聞部と言った感じであった。
「おっす!力!!」いつも通りに挨拶を交わしいつも通りの反応が帰ってきた。
「おっす!!…じゃあねーよ!お前昨日雫ちゃんと喧嘩したんじゃないのか?」
野球の事じゃないのかよと呆れたばかりに、仲の良いこいつにとって見れば当然かと思った。
「喧嘩ではないよ…誰に聞いたんだよまさか、神崎かーー」
あの時校庭に居たのは3人だよな?と記憶を確認した。
「神崎?何であいつが?嫌な奴の名前を出すなよー朝ばったり校庭でテニス部の練習をやってたから会って聞いたんだよ」
それを聞いて剛は気難しそうに、あっさりとこう言った。
「それで?」
あまりにも力からしてみれば間の抜けた返事だったので、仕方ないなと言う感じで
「ごめんって謝ってたぜ、言い過ぎたってさ」
「それだけか?」
「ああ…それだけ…後昼休み部室で待ってるだってさ」
「おいっ!後5分で授業が始まるぞ早く行こうぜ!!」
と手を引っ張られて教室に入った。
しかし宜野座高校の存在はこの時はすでに気にならず、雫のことばかりを考えていた。
