第二十四話[理由]































朝の9時33分より始まった試合は9回の表、時計は12時過ぎを指している。

日本独特のムシムシとした熱気と熱を帯びている試合展開に両軍ベンチとも疲れがピークに達している。


「俺が受ける」

「……はぁ?」

「何だその反応は?」


ベンチにて水田が大具来をこづく。水田には皆が持っている緊張の表情は無く、むしろ笑っているように見える。


「先輩、ナックルの時には俺に捕らせるって言ったのは先輩ですよ。実際先輩はナックル捕れ「お前だって捕っちゃいねぇ」


水田が自分の捕手用のグローブを持つ。


「何が言いたいんですか?」

「俺はストレートも捕れるしシュートも捕れるしシンカーも捕れる、ナックルは……死ぬ気で止めるさ、正直、ナックルだけじゃキツイだろ?」


水田はそこで一息ついてさらに続ける。


「監督には言っておいた、後はお前と柚元が納得するかどうかだ」


柚元は簡単に納得するであろう。そんな考えが大具来の頭をよぎった。


「分かりました……でも本当に死ぬ気で止めてくださいよ」

「当たり前だろ、今日は勝つために野球やってんだ」








マウンドに立っているのは投手の柚元と外野手の大具来。


「あとアウト三つ、簡単簡単、運が良けりゃあ三球で終わる」


大具来がグラブの方の手でぽんぽんと柚元の頭を叩く。

8回の全力疾走もあり柚元は息も切れ切れで呼吸も整っていない。

そんな柚元に大具来がまた囁いた。


「言わないでおこうと思ったんだけどさ……一塁側に来てるぞ……村と言うか集落と言うか……多分全員」


それだけ言って大具来はライトへと走り去っていった。

柚元が一塁側アルプスを見回すと、確かにいた。


20人に満たないであろう老人、中年、子供たちが。


慣れないであろうメガホンを両手に持ち。


慣れないであろう背もたれの無いベンチに腰をかけ。


慣れないであろう大声を張り上げている。



「やった……」


正面を向きグラブを隠しながら柚元は言う。


「やった……やったぞ!」







負けられない理由がある。

一人はみんなのため。

そして

みんなは一人のために戦っている。

どのようなドラマがあるのかは誰も知らない……

しかし。
















彼らが負ける理由はもう存在しない。








「ッットライクゲームセッ!」










「「ありがとうございました!」」










『勝利した柚北高校はグラウンドの整備を……』











試合終了

恋4−5柚