12――――約束
雪穂は救急車に乗って急いで病院に運ばれたらしい。
俺は学校を早退して病院に行ったが、面会禁止で阻まれていた。
それはどれだけ重い病気かと知らせる事だとも俺はその事も気付かない…
面会が許されたのは二週間後。
どうやら手術が行われたらしい、雪穂は呼吸器をつけている。
俺はその姿を見て、ただ黙っている事しか出来なかった。
城所は平気で話している、その言葉を辿るようにして呼吸器からこもった声を発する雪穂。
佐々木「拓也…ゴメンっ…ね?」
俺には解からない事が多すぎた。
雪穂のゴメンの意味さえ解からなかった…
志田「…あぁ…」
ただ単調な返事しか返せなかった、でも1つだけ解かった事があった。
城所なら何か知ってる…たったその1ピースを持っていただけで…
パズルは完成して…崩れた。
病室から出た俺は城所に問いかけた、でもその後に俺は殴られた…モチロン城所に…。
俺なんか殴られっぱなしだな、いつも…いつも。
城所「アイツがどんだけ…どんだけお前の事…!」
城所はそう言い掛けて俺の元を去っていった。
もしかして俺に雪穂を愛する資格など無いのかもしれない…俺はそういってしまった…
病室にもう一度戻ろうとした、俺は雪穂が…好きなのか?
もう一度会って確認したかったからだ。
その時病室に白い服を着た中年男性つまり医者が雪穂の病室の中に入っていった。
医者「…す」
俺はいけないと思いながら壁に耳をつけて会話の一部分だけ盗み聞きしてしまった。
ただ…その会話は一部分だけで充分だった…
医者「あと一ヶ月持つか…どうかです…」
目の前が真っ暗になった、視界から『光』が消えた。
もしかして違う奴じゃないかと確かめるが、個室だ…
医者が病室から出てきたが窓に圧し掛かっているフリをする。
ガララッ…
雪穂だった。
志田「………お前…大丈夫なのか?」
佐々木「もう、退院していいんだって!」
無理してる…自分が死ぬことに対して恐怖感を感じない15歳の女の子がいないことぐらいは解かっていた。
きっと泣きたいんだろう、でも俺がいるから無理してる。
志田「泣けよ…」
それが俺の精一杯の優しさだったんだ。
俺ができる唯一の事は今絶望に打ちひしがれている雪穂を…抱きしめる事だけだと思った…
佐々木「…ぁは……」
それでも1番辛い筈の雪穂は無理をしていた、どんな事があっても、1番辛いのは…本人の筈なんだ…
そっと抱きしめるだけだった…
俺には多分それ以上していい事など無いだろうから…
佐々木「…………ひっぐ…」
雪穂は声を押し殺して泣いていた。
多分アイツなりの意地の張り方なんだろう…
雪穂の病気は『脳ガン』生存確率が極めて低い病気だった。
雪穂は学校を辞め遠い遠い所に引っ越したらしい。
それは多分気遣いだったんだと思うアイツなりの。
当然探したけど見つからなかった、もう解かりきっていた事なのに探してた…
そして…
担任「残念なお知らせがある…」
クラス中がどよめいた。
知っている奴は知っている…俺も城所もだ。
担任「前までこの学校に居た…」
その瞬間記憶がノイズがかかりビデオのまき戻しみたいに初期から戻っていった。
佐々木「ぅん…」
佐々木「ゴホッ…ゴホゴホゴホ!!」
佐々木「拓也…ゴメンっ…ね?」
……!
志田「なぁ雪穂…俺と履衆院高校に来ないか?」
佐々木「ぅん…」
佐々木「ゴホッ…ゴホゴホゴホ!!」
城所「アイツがどんだけ…どんだけお前の事…!」
佐々木「拓也…ゴメンっ…ね?」
最後にアイツが言った事…
何で気がつかなかったんだろう?
アイツはずっと後悔してたんだ…
担任「佐々木雪穂が亡くなった…」
城所は唇を噛み締めている。
俺は…
佐々木「拓也…ゴメンね…」
最後に1つの映像が脳に入り込んできた…
佐々木「甲子園に行けなくて…ゴメンね」
志田「雪穂ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
………今だ俺はピリオドを打てない。
高校は近所の東水原高校に。
そして入学式…
新入生代表…那珂川果歩!
那珂川「ハイ!」
俺は新しい何かを見つけるのだろうか?
なぁ…雪穂。
