第2話『2つの野球部』




































キーンコーンカーンコーン









これが彼らが3回目に聞く、一日の全過程終了時に鳴るチャイム

簡単にいうと、進学して3日と言う月日が流れた・・・と言うことだ。

帰りの学活を終わらせて、皆が教室から散っていく。それがこれまでの二日。

しかし、今日は、今までとは違った。一年の部活動仮入部期間突入。

よって、この教室で、殆どの生徒が各部活へと準備、着替えを行うのだ。


野上「おい、太一?お前本当にやりたい部活無いのか?」

小宮山「あぁ、なんつーかだるいじゃん」


無いわけではない、だけど続けていく自信が無い。

もう中学の部活だ、いままでの倶楽部チームの遊びとは違う

部に迷惑がかかる・・・。


野上「おいおい、お前の一応スポーツマンだろ。この青い空を見てみろよ。こんなに良く晴れた日に家にいると、せっかくの運動神経も腐っちまうぞ!」

小宮山「青い空を見てもAV女優の事しか思いうかばねーよ」

野上「もういいよ・・・じゃあな」


あーいえば、こういう。

そんな自分が嫌いだ・・・。

何で自分の気持ちに素直になれないんだか・・・。


小宮山「いっぺん、野球もやってみたいんだけどな・・・」


ただやはり、野球部も続けられる自信が無い。

野球は興味あるが、雑用や球拾い、地味な走り込みや筋トレには興味が無い。

やはり、野球には向かないか・・・・。



小宮山「まぁいいか。堅時でも見ててやるか・・・」



小宮山は、3階の教室の窓辺から、ため息を吐きながら校庭を見下ろした・・・。

だが、しばらくすると・・・心地よい気候のためか、しばらく意識が飛んだ・・・・。





















































「おい、おめぇこんなとこで何やってんだ!?」


何者かに起こされて気が付くと、太陽は沈みかけていた。

時計の太い針は4の文字を指していた、おいおい、もう4時かよ・・・・。

小宮山はハッとして、辺りを見渡す。

すると、そこには小柄の自分より更に一回り小さな少年が立っていた。

顔立ちは、やはりまだ少年のようで、ひょろっとした感じ。髪型は丸坊主がそのまま伸びたようで、首筋の少し下にはくっきり日焼けの後が見える。


小宮山「おい、お前野球部か?」


そういうと少年は、くるっとこちらを振り返り、ニカッと笑って答える。



「いや・・・入部できなかった」

小宮山「は?どういうことだよ・・・・。」



入部できなかった?そんな訳はないだろう・・・・。

入部届に名前を書いて、部活と動機を書けば入部くらいはできると思うけど・・・。

それとも、日本人じゃないとか・・・。それはないか。



「野球部に、入部試験ってのがあったんだ。そいつで入れなくてよ・・・」

小宮山「入部試験?なんだよそりゃ・・・」



確かに、ここの野球部は強いで有名だ。

だが、公立の中学の野球部の入部試験なんて、聞いたことが無い・・・。

そんなことよりも、堅時はどうだったんだろう・・・。



小宮山「おい、堅時・・・いや・・・。野上って奴はどうだった?」

「いきなり言われてもな・・・、でも40人近くの希望者から18人に絞られてたぞ」

小宮山「18人!!なんでだよ!?」

「さぁ?ベンチ入り枠ギリギリだけ入れて、主力を重点的に育てたいんだろ。だけど別にこの学校は他にも・・・」

小宮山「冗談じゃねぇよ!!」



 そうやって言って、小宮山は話の途中で窓から飛び降りた。

二階の入り口付近の小さな窓に着地。するとそのまま校庭に向かって跳躍。

軽く一回転して不時着、野球部の部室の方へ走っていった。

「あ〜あ、焦っちゃって・・・人の話を最後まで聞かずに・・・にしても身軽な奴だな。」












































小宮山は、野球部の部室に乗り込んだ。

野上がいままでどれだけ努力して野球に取り組んでいたかは、俺も良く知っている。

そんな奴が、何故野球を奪われなければならないのだろうか・・・。


小宮山「堅時っ!!」汗だくになりながら、息を切らしながら部室に飛び込む小宮山。


野球部の生徒は‘何事だ‘といわんばかりにキョトン顔を浮かべている。


「お・・おい。どうしたんだよ・・・」


そう聞かれると、小宮山はハッとして辺りを見渡す。

野上はいなかったものの、同じクラスの影の薄い生徒鈴木を発見した。


小宮山「おい、鈴木。堅時はどうしたんだ!?」

鈴木「アイツか・・・。二次で落ちて帰ってたような気が・・・」

小宮山「マジかよっ!!」


そういうと、小宮山は部室を去って、生徒達が出入りする東門の方へ走っていく。























落ちたって・・・どうすんだよ。お前は野球をあんなに頑張っただろ・・・。

ふざけんな・・・、勝つためとは言え、こんなやり方は認めねぇぞ・・・。












しばらく走ったところで、とぼとぼと歩いている野上の姿を発見した。



小宮山「堅時っ!!おい!!」

野上「太一!帰ったんじゃなかったのか!?」

小宮山「そんなことより、お前野球部・・・」

野上「あぁ、知ってるのか。仕方ないよ。俺、才能ないし・・・」

小宮山「だけどよ、お前はあんなに努力してきたじゃねぇかよ!」



野上は無理に笑おうとしているが、目には涙が滲んでいる。

なんで、実力の無い奴の入部は認めないんだ。

下手糞はどんなに努力しても、所詮下手糞なのだろうか・・・・。



「おい、お前。人の話は最後まで聞けよ」



聞き覚えのある声、振り返るとそこには先ほどの少年が立っていた。



「この学校には、もうひとつ野球部があるらしいぞ!!」


























小宮山「はぁ!!!?」

野上「えっ!!!!?」



もうひとつの野球部・・・。

そんなものが・・・存在するとは・・・・・。

しかし、もうどうでもいい。これで決まった・・・・。








俺はそこで、野球を始める・・・と。