第6話『考える野球』

 










 

 

俺が第二野球部に入部してどれだけの時が経ったか・・・。

 

いや、正確には野球を始めてから・・・。と、言うわけなのだろうが・・・・。

 

桜の花もすっかり散った、厄介な梅雨も過ぎ去った。

そして、代わりに灼熱の太陽が、グラウンドの真上にやってきたのである。

 

吉見「はー、あっちーなぁ〜」

西郷「この熱さ、もう尋常じゃないな・・・」

野上「うん、でももう少し頑張ろうよ。先輩達も頑張ってるし」

 

最初に発言したのが、チーム1小柄な選手吉見

次に発言したイカツイ選手は、チーム1の巨体を誇る西郷

そして最後に発言したのは、幼馴染の努力家野上だ。

 

同期の1年ながら、彼らは本当に良く頑張っている。

自分より遥かに上の実力を持っているにも関わらず、練習を怠らない。

そんな環境につられ、俺も3ヶ月頑張ってきた。

 

浅間「おーし、一旦休憩しようぜ〜」

 

3年の浅間の合図でそれぞれ練習していた選手たちが集まる。

1年も、もちろん唯一の2年生真上もそれにつられて集合する。

 

古橋「ふ〜、やっぱ夏は暑いわ。ったくやってられへんでホンマ」

門倉「一人であんだけ投げておいてよく言うぜ」

 

第二野球部は、3年生9人、2年生1人、1年生4人で構成されている部。

主に野球部に入れなかった者、訳あって退部したもの、気軽に野球を体験したい者が集まっている。

 

俺は3ヶ月で、野球のルールは大体覚えた、流石の俺でもやってりゃあ覚えられたよ。

そして、俺は二塁手と言う守備位置を守ることに決まった。

体格がない分、筋力や肩力はないけど、スピード、センスが変われて抜擢した。

おかげでチームの状況もバッチリわかっている。

 

試合はまだ行われていないが、それぞれの選手の守備位置などは固まってきている。

 

投手は古橋先輩。センターの門倉先輩と西郷も投げられるらしいが古橋先輩がエースになるだろう。

捕手はまだ決まっていないが、嘉勢先輩が主に受けている。

一塁には畑中先輩がいるが、誰がどう見ても西郷との差は明らか、このまま西郷がレギュラーを奪取しそうだ

二塁の真上先輩も運動神経が良いわけでもなさそうなので、立場逆転も時間の問題。

三塁は技量では賢時(野上)が上回るが、気迫、根性で浅間に圧倒されている状況。

遊撃は壮真(吉見)に決まりそう。もしかしたらチーム1の実力者かもしれない。

外野は門倉先輩がセンター以外は、イマイチ決まっていないようだが。

控えには肩を壊し、投げられないが経験豊富な武藤先輩や中浜先輩がいる。

 

 

戦力としては申し分ないみたい。。、だから・・・

 

 

俺は試合が待ち遠しくてたまらないのだ・・・

 

 

小宮山「古橋センパイ、この部って試合あるんですか〜」

古橋「あるに決まっとるやろ!舐めとんのかい!」

 

古橋が若干怒り気味に返すが、小宮山は慣れた口調で返す。

 

小宮山「怒ること無いじゃないっすか〜、短気なんだから^」

古橋「コイツ^」

 

簡単なやり取りが済まされる。

どうやら第二野球部の雰囲気は良好らしい。

しかし、流石にこの熱さには参っているらしく、少しだれている様子だ。

 

真上「そろそろじゃないスか?」

門倉「もうちょっといいだろ・・・」

 

練習を再開しなければならないが、誰もがそんな気分ではない・・・・。

 

結局、古橋の提案で‘今日だけ‘午前で練習を切り上げることにしたのだ。

 

古橋「今日だけやで、今日だけ」

小宮山「どうだか・・・」

古橋「ホンマにお前は口がへらんなぁ」

 

そんな口喧嘩の中、門倉がある提案を出す。

 

門倉「だったらよ、練習試合してくれる草野球でも探そうぜ」

小宮山「え?でも、相手は大人だよ!?」

門倉「何だっていいだろ、試合したいんだろ?」

古橋「そういえば去年勝ったよな、弱いところに」

門倉「緒戦だし、そこに勝負を挑みに行くか」

吉見「ちぇ、せっかくの休みだったのに・・・」

 

河川敷にはいくつものグラウンドが存在する。

すこし探せば、試合をしてくれるチームはいくらでもあるのだ。

だが、問題は中学生の彼らでも勝てるチームでなければならないのだ。

 

そして、これから試合を挑むのは、昨年勝利したという弱小チーム

名前は葛西セメント野球同好会と言うらしい。

 

古橋「去年勝ったのは、あのおっさん達だけや。みときー」

 

小宮山達は葛西のグラウンドを訪れた。

弱小と聞いて、誰もが安心していた。

現に昨年、中学生の自分らが勝っているチームだということもある。

 

 

 

しかし・・・・・・

 

 

 

ズッバーン

 

 

 

 

葛西のグラウンドで、長身の投手の投じた球がミットに突き刺さる。

 

野上「は・・はやい・・・」

 

その様子を見て、吉見が古橋の体をゆさゆさと揺さぶる。

 

古橋「知らんわ、あんなん・・・・」

吉見「アンタら、アレにマジで勝ったのか?」

古橋「だから知らんわ・・・・」

 

 

 

誰もが、それを見て撤退を決意した・・・・。

 

しかし・・・時既に遅し・・・・。

 

 

 

小宮山「おーい、試合申し込んできたよ〜」

 

 

西郷「・・・・・・」

古橋「な・・・何やて・・・・・」

門倉「あーあ・・・」

 

 

浅間「こ・・・こんガキ・・・。本物のバカだ・・・」

 

 

 

 

続く