第8話『偶然発見された適所』


















 

 

ズバーン

 

ストライーク、バッターアウト

 

古橋「ありえへんわ、大人げ無いで兄ちゃん」

吉見兄「やれやれ、手加減したら打たれてゲームセットでしたよ」

控え投手「スマンね。キミにはいつもお世話になってる」

 

130km/h台の速球で、三番古橋をねじ伏せる相手投手。

なんと驚き。それは第二野球部のチームメイト。吉見の兄だったという

 

古橋「おい、壮真。どないこっちゃ!」

吉見「聞いてないよ。創兄貴全くうちに連絡よこさないんだもん・・・」

小宮山「おいおい、生き別れかい?(創って言うのか・・・)」

吉見「んなわけねーだろ。」

 

その裏、完全にペースが乱れた城彩第二野球部

初心者であるサード庄治とセンター中浜が連続で失策を犯し無死一、二塁。

 

そして、最大の痛手はこのあとだった。。。

 

コツッ。

 

4番に入った吉見兄に回す為に、バントを決行した葛西セメント。

 

吉見兄「あらら、バット持って走っちゃ駄目だよ、早く投げて・・・」

 

素人そのものの3番打者のおじさんは、バットを持ったまま走っていた。

そして、吉見の兄がそれを注意する。

 

だが、悲劇はこんな些細なことから始まった。

 

3番打者「あわわ、こ・・・こうか・・!?」

 

焦った3番のおじさんは、なんとバットを空高く放り投げた。

 

小宮山「えー、バカじゃん!」

野上「お・・おい、太一。口に出すなよ!」

 

嘉勢「古橋、一塁で・・・・」

 

 


























 

バコッ・・・・

 

 































 

嘉勢「ーーーーー・・・・・・」

 







 

三番打者「あれま、えらいこっちゃ・・・・」

 

 

古橋「い・・・いっつしょっきんぐ・・・・やで・・」

 

 

バタッ。

 

 

嘉勢がそこに倒れてしまった。

 

原因は、おっさんの投げたバットが、偶然嘉勢の頭部を直撃したのであった・・・・。

 

吉見兄「おい、頭を動かすな。誰か一人付いててやれ」

庄治「あ・・・俺、付き添う」

 

三塁から歩み寄った庄治が、嘉勢の身体から防具を外し、ベンチへと運ぶ。

嘉勢はかすかに意識はあるようだが、当たり所が悪かったか、動くことが出来ない。

 

庄治「試合続行は、無理だな・・・・」

 

そんな、庄治の声に。一同は青ざめる。。

 

 

小宮山「おいおい、アレ。メッチャ痛いだろうな・・・堅時」

野上「一日は安静にしたほうがいいかもね・・・・」

小宮山「ははははは・・・・・」

 

 

これには、選手たちも苦笑するしかなかったようだ・・・・・。

 

何故かと言うと・・・・・

 

捕手が出来るのは、嘉勢ただ一人・・・・・・・。

 

古橋「ど・・・どないすんねん」

 

この野球部には、嘉勢と古橋以外。まともな野球経験者がいない。

それに、古橋は元々器用な方ではないため、急造捕手は不向きなのである。

他の選手も、捕るには取れるだろうが。

超剛速球MGや、魔球フォークボールの捕球はできない・・・・。

 

どうする・・・・・誰もが解決策を自分の頭の中で探すが、見つけることが出来ない。

 

 

そんななか、意外な人物が口を開いたのであった。

 

 

吉見兄「おい・・・壮真。お前やれよ。」

 

吉見「は?」

野上「えぇ!?」

西郷「!!」

門倉「おいおい・・」

古橋「なんやて!」

 

一瞬にして、周囲からは驚きの声が上がった。

一同が吉見に視点を当てるが、小柄で細身の彼が捕手に向いているとは体格とは思えない。

ましてやショートストップと言う守備の要が消えてしまう。そいつは痛手だ。

だが・・・、身内である彼が進めるのだから、見込みはあるのだろう・・・。

 

古橋「しゃーないわ。壮真。お前かぶれ。で・・・あとは・・・」

浅間「俺が上がるぜ、この際不安だとかはいってられんだろ。」

吉見「ショー君(浅間)がショートだったら、レフトはどうすんの。あと庄治君もダメじゃん」

門倉「あぁ、嘉勢一人だとベンチから落ちたりしたら危ないからな・・・・」

 

守備の布陣に、二つ空きが生じる。

サードと、ライト。

三年武藤と畑中の守りでは、完全に信用しきれない。

そこで・・・・

 

 

古橋「簡単や、アイツらつこーたるわ」

 

 

小宮山「お・・・俺達!?」

野上「です・・・か・・・!!」

 

 

頭の中が真っ白になった。

 

 

生まれて初めてだった。試合に出れて・・・・嬉しいと感じることが出来たのは・・・・。

 

 

そして、野上も。

 

 

再びこのグラウンドに立てる喜びで・・・・

 

 

頭が真っ白になっていた・・・・・。

 

 

小宮山「あー、長かった!待ってたぜこの瞬間!!」

野上「思い切ってやるんだ・・・思い切って・・・・」

 

 

結局、セカンドしか守ったことが無い小宮山は。二塁へ配置。

真上がライトに守備位置変更。

サードには、野上がそのまま入る。












 

試合再開。

だが、慌しい第二野球部だったが。

 

どんなことがあろうと状況は変わらない。。

 

古橋「さて・・・・・・気を取り直す間も与えてくれへんな・・・・これは」

 

無死満塁。そして打者は4番の吉見兄。

 

 

吉見兄「さぁて、試合をより面白いものにする為に本気でやらせてもらうよ」

古橋「勝手にせぇ。打たれせんぞ!!」

吉見「(古橋さん、焦ってる。。ダメだ・・・・)」

 

中指と人差し指の間に挟んだボール。

そして、そのボールは本人の理想より遥かに早くリリースを終える。

浮かんだ落ちない魔球は。遥か彼方へと消えていったのであった。。

 

 

吉見兄「悪ぃな。兄ちゃん。」

吉見「お・・大人気ねぇ。。」

古橋「おい・・・冗談やろ・・・・・・」

 

 

満塁ホームラン。。

7−4。一気に三点差とされてしまった・・・・。。。

 

以降。勢いを失った第二野球部打線は沈黙。

だが、古橋も立ち直りランナーは出すも要所を切り抜ける好投。。

 

そして。試合が動いたのは。

 

5回表。

 

打者は4番、門倉。。

 














 

 

続く