第15話『空白の一年前B』

 









 

 

 

 

 









 

古橋の退部理由を探るための、小宮山達の作戦も終盤を迎えようとしていた。

古橋に関連する、最重要人物。1年4組の古橋時雨との出会いだった。

 

ちなみに、これは完全に筆者側のミスを補うための裏設定だが。

二学期始めの生徒総会でアルファベットで分けられていたクラスを、数字で分けなおすことになった。

その為、小宮山、野上。そして幼馴染の女の子。古畑茜はB組なので、2組に変わった。

 

放課後。そんな2組に吉見、西郷を招き入れ。

作戦を発表することにした。

 

小宮山「なぁ、なんで茜がここにあるんだ?」

古畑「‘ある‘って酷い言われようだね。いいじゃん。うちも混ぜてよ」

野上「まぁ。ダメって訳じゃないけど・・・、ねぇ太一。」

 

何と、放課後あろうことか幼馴染の古畑茜まで残っている。

最近出番が少ないので、多少でしゃばったのかどうかは定かではないが・・。

しかし、そんな古畑の傍らにもう一人の女子生徒の姿を確認する

 

髪が肩の下まで下りているが、決してそんなに長いとは思えない程度。

女性としては短い部類に入るのだろう。

とにかく爽やかな感じが漂っていて、悪い感じは受け取れない。

 

彼女の名前は市原楓。

クラスでも特に目立っている訳ではない。

普段は古畑と共に行動したり、話をしたりしているが・・・・

特に他の生徒と比べて、話をしている訳ではなかった。

 

野上「な・・・なんで市原さんまで。。」

古畑「いいでしょ。面白そうだしさ。ねっ」

野上「ええぇ・・・どうする?太一?」

 

照れ屋さんの野上は、ちょっと引いている様子だが。

女好きの小宮山の解答は聞くまでもなかった。

 

小宮山「いいよ。茜にも飽きてきたところだしさ」

古畑「ちょ・・それどー言う意味よっ!!」

市原「はは、本当に仲がいいのね、二人は」

 

古畑が、冗談で小宮山の胸を軽く突き飛ばすと。

得意の演技でそのまま辺りの机を巻き添えにして何処までも吹っ飛んでいく。。

 

そして。なんとも悪いタイミングで。。。

 

ガラガラガラガラ

 

吉見「・・・・お・・おい。古畑さん。あんた、何者だ??」

古畑「あ・・・あはは。な・・・何でもないよ・・・」

 

小宮山の演技に、すっかり騙された吉見がキョトン顔で、古畑を見つめた。

同行している西郷も驚きを隠せないようだ。

それに対し古畑は必死に誤魔化しの笑顔を浮かべるが、片目を鋭くして小宮山を睨む。

 

小宮山「(あ〜怖い怖い・・・)」

 

 

 

 

その後、座談会を終わりにして、本題に入る一同。

この作戦の最重要人物、吉見と西郷に、今回の指令を説明した。

 

吉見「おいおい。俺が古橋先輩の妹とか!?」

野上「まぁそう言う事みたい。ごめん。。」

小宮山「とりあえず、聞き出せばいいんだ。気楽にやれ」

古畑「ねぇねぇ。何の話??」

 

結局、特に作戦は無し。

第二野球部三年主将格。そして今回の問題の源。古橋浩太郎の妹、古橋時雨の要求どおり。

吉見を差し出して、問題の古橋の退部問題の真相を聞き出すために。

 

しかし、その作戦に異論を持ったものがいた。

 

市原「ねぇ。それって古橋さんって子に失礼なんじゃないの?」

小宮山「あぁ?どうしてだ?」

 

すかさず、小宮山が聞き返す?

 

市原「だってさ。古橋さんは、吉見君の事が真剣に好きで、ずっと想ってて。ようやくきっかけがあって、頼んでみたんでしょ?それなのに、そんな作戦みたいに自分達の都合のいいように終わらせていいのかな?」

古畑「うん、うちもそう思う・・・」

小宮山「でもよ。こっちはそんな場合じゃないんだぜ。」

市原「だとしても、そんなの酷いよ。」

西郷「と、言われても。もう手遅れな気がするんだが・・」

 

男子と女子で、意見が分かれたが。

一般的に考えて正しい意見は、古畑と市原の意見だ。

しかし、今の彼らには、そこまで考えてあげられる余裕がなかったのだった。

 

小宮山「じゃあどうすれば・・・」

市原「やっぱり。素直に謝ったほうがいいよ。もう吉見君に古橋さんのこと話ちゃったんだから」

野上「たしかに、紹介してくれって。それとこれとは違う話だったもんね。。」

 

 

 

 

野上の言葉を最後に、しばらく沈黙が走った。

誰もが、言葉を発することが出来なくなった。

やはり、人の閉だされた過去を聞き出すのは、そう容易い事ではなかったのだ。

 

 

市原「結局・・・そうするの。。」

 

 

市原のその言葉に、反応するものはいなかった。

誰もがどうすればいいか、考えてはいる。

しかし、結論までに辿り着く事は出来ない。

 

どうする。。

そんな中、吉見からある提案を出した。

 

吉見「いや。待って。要は俺が古橋君の妹とマジで付き合えばいいって事?」

 

小宮山「え?」

西郷「おいおい!」

古畑「何?」

野上「っ!!」

 

市原「ど・・・どういう事??」

 

 

一同は驚きを隠せなかった。

主点は古橋の過去を探ること。妹の時雨はその重要人物でしかなかったからだ。

 

吉見「だからさ。結局パチもんの演技じゃダメってことなら。俺が直接会ってきて。仲良くなっちまえばいいんだろ?」

古畑「ちょ、吉見君?それ本気!?もし、古橋さんと気が合わなかったらどうするの!?」

小宮山「あぁ。茜の言う通りだよ。お前の好みとか全くわかんねーけどよ。」

 

古畑に続き、小宮山までも異論を上げる。

 

吉見「そん時はお前らでやってくれ。とりあえず俺はその子と仲良くなってみっからさ」

 

吉見の表情からして、多少はムリしている部分もあるのだろう。

しかし、やはり。この際そんなことまで気にして入られないだろう。

 

小宮山「ま、いいや。頑張れよ。別に顔がアレって訳じゃないし。案外いいかもな。それ。」

吉見「だけど責任はとらないよ。。」

 

結局、吉見を先頭に。第二野球部一年は古橋の妹、時雨のいる4組に直行した。

教室に残されたのは、古畑茜と、市原楓の二人になった。。

 

市原「何か面白くなってきたね〜」

古畑「楓っ!そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!」

市原「でもさぁ。吉見君って結構可愛いカッコ良いじゃん」

古畑「そうだけどさ・・・、あっ。わかった。楓も吉見君を狙ってるとか!」

市原「ううん。そうじゃないの。でもね・・・・」

古畑「でも?」

市原「いや、なんでもないよ・・・・」

古畑「???」

 

そのとき、市原の顔が妙に赤くなったのは言うまでもないことだった。。

 

 

 

 

一方、一年と古橋を欠いた第二野球部先輩チームは。

いつものグラウンドに集まって、ひたすら練習を重ねていた。。

 

浅間「門倉、これで100球目だ。そろそろいいんじゃないか?」

門倉「いや、もう少し投げさせてくれ・・・・」

 

マウンドで、大量の汗をかく、門倉。

浅間に受けてもらい、いつも以上に力の入った投げ込みを繰り返す。

 

門倉「(古橋。俺たち落ちこぼれなんかの為に、あんな目にあわせちまって。。でもよ、これが俺たちの最後になるかもしれないんだ。戻って来い・・・)」

 

 

そして、もう一人。いつも以上に汗を書き、必死にノックを受けるものがいた。

 

真上「嘉勢せんぱ〜い、まだやるんですか〜?」

嘉勢「まだだ。こんな守備範囲じゃ、奴らの打球は取れない・・・次はもう少し左右に振ってくれ」

真上「は〜い・・・・」

 

嘉勢「(古橋。お前のやり方は気に食わないけど。志を高くもってやってきたお前が。こんなところで白旗掲げていいのかよ・・・・)」

 

 

 

 

真実を知る彼らもまた、自分達なりの答えを見つけ出すために、奮闘していた。

 

空白の過去を持つ古橋。真実をまだ知らぬ1年。門倉、嘉勢など途中退部選手。素人。

全ての駒が、それぞれの答えを求め、動き始めた。

彼等第二野球部が、一つの点で交わる時・・・・・。

 

 

 

 

 

第二野球部の何かが・・・変わるのだろう。。。

 

 

 

 

 

 

 

続く