第2話 其の四のA[揃った9人目]




































「うっ…が・・・・・・・・・いっ・・・・ひあ…」


果物ナイフでは致命傷にならない。

男はそれを知ってかしらずか少年の背中を深く切りつけ続けている。

背中を切りつけ終えたら次は正面を向かせ胸を切りつける。

少年は自分の置かれてる立場を理解した。

自分が何をされ父、母、弟は何をされたのか。

しかし分かるには遅すぎた。

男は切りつけることに快感を覚えているのか下品な笑いを口元に浮かべていた。

不意にドアが蹴破られた。


「警察だ!手を上げろ!」















































練習後更衣室で着替える。

ここの男子更衣室は広くて良い。

そんな事を思いながらアンダーシャツを脱いだ。


「オイ早乙女。」


急に丸岩が入ってきた。

僕は本能的にシャツで自分の肌を隠す。

丸岩の名誉の為に言っとくがこれは決して丸岩に襲われるとかそういう理由ではない。


「あっとすまん、着替え中だったか。」


慌てて後ろを向く丸岩その隙にさっとシャツを着る。


「いい加減にしてくれよ」


丸岩がポツリと言う。


「何で男同士でこんなことをしなきゃならんのだ?」


「ごめん…でもすぐ直すから。」

「そう…小坊の頃からそう言ってるよな。そのままずるずると引きずってもはや5年だ。お前の気持ちが分からんでもないがそろそろいいだろう。この間海に行った時も上はシャツだったろ。」


言葉に詰まる。

何も言い返せない、仕方が無い丸岩の言ってることは正しいのだから。

僕は着替え終わり更衣室から出た。























「またお会いしましたね。」


帰り道また彼女にあった。


「一体何なんだ君は?」


夕焼けをバックにたたずむ少女に僕はやや強い口調で聞く。


「私は葉桜と言う者です。恋恋高校の1年生です。これで私が何者かは分かったでしょう?」


まったく臆せずに彼女はまっすぐこちらを見据えながら答えた。


「しかし、私が貴方にとって何者なのかは私にも分かりません。」

「そのとうりだよ。では何で僕の前に姿を現すんだい?」

「感じたからでしょう。」

「何を?」

「同類の臭いです。」


彼女は瞬きもせずに僕を見つめている。僕は彼女の目に耐えられなくなって目をそらした。


「私と同じで心の奥底に悲しみを背負っているからです。」

「だから!それは何なんだよ!」


僕が顔を上げるとそこにはもう誰もいなかった。