第六話[なんてこったい!学年末テスト]






































世の中には常に矛盾がある。

必ずある。

たとえば勉強がすべてではないと言っているくせに

『今度の学年末テストで平均点が30点を切った者がいた部は半年の活動停止処分となります』

と書いている張り紙だ。


「な…な…なんてこったーーーーーーーーーーーーーい!!!!!!!」


そして少年、丸岩もこの矛盾に飲み込まれたようで…




























「くぉら!勉強せんかい!」


ドシィという鈍い音がするほどの鋭い蹴りを延髄に叩き込まれ、

僕は就寝という幸せ快楽世界から新庄選手のホームスチールぐらい強引に現実世界に引き戻された。

今僕は英語を勉強しています、しかもこの後には数学と社会を勉強しなくてはいけません。

理由はあれです…今までの行いが悪かったと言うか…

自分は現代の勉強に向いていないと言うか…

まあ今回の学年末テストで平均点が30を切りそうだからですけどね。


「だから!そこは3平方の定理じゃないと言うとろーが!」


講師は丸岩です。

丸岩は勉強が出来ます。物凄く出来ます。

何で僕は恋恋と言う進学校に入ってしまったんでしょうか?誰か答えを知っている人はいませんか?






























学年末テストも無事終わった…

早乙女は全教科平均32点という恋恋史上最低点で辛くも半年の活動停止を免れた。

しかし世の中とは不思議なもので何故かこの俺様が数学担当の沼田紀子教官(イニシャルがN・Nだった気がするが…)に呼ばれる羽目になるとは…


「あのー自分何か呼ばれるような事しました?テストもそんなに悪かった記憶は無いんですけど…」


沼田教官にそう伝える、早乙女に手が回りすぎて俺様が勉強していないと言う小説じみた事はしていないからいつもどうり出来たと思うのだが…


「いいえその逆よ、貴方は今回学年トップの成績だったわ」

「それは良かったです…あの話がこれだけならもう帰っていいですか?」


今日は大事なミーティングがあると早乙女が言っていた、

できる事なら早く部活に戻りたいのだが…


「話はこれだけではないの…貴方も知っているだろうけどこの恋恋高校は進学校なのよ」


それは俺様だって知っている。


「進学校としては丸岩君、貴方のような成績優秀者をほっとく訳にはいかないのよ、だから貴方には超進学コースに進んでもらいたいの、いいわね?」

「それはだめです、超進学コースには部活時間が無いですからね」

「この際野球なんて諦めて」

「野球は絶対にやめません!」


やめてたまるかってんだい。


「なぜ!?」


食い下がってくる沼田教官…ここで負けるわけには行かない!


「えーとまあ仮に俺の友達にS君というのがいたとしましょう」


Sとは早乙女のSな訳だが…

「俺はそのS君とは古い付き合いなんですね、S君は物凄くイケメンなんですけど…俺はS君が悲しんでる顔を見るのが凄く嫌なんですよ」


あれ?何俺様はマジになっているんだ?

「一度だけS君の悲しんだ顔を見た事があるんですけど…なんか見た瞬間凄くこっちまで悲しくなってきて…俺そんときに決めたんですよ…あの…なんて言うか…できる限りこいつを悲しませないようにしよう…とか思っちゃたんですよ」


俺様の言っている事は嘘ではないが…なんで本当の事を言っているんだろう?


「そいつの夢は甲子園優勝投手なんですよ…今ここで俺が抜けたら…人数たりなくなって…あいつ凄い悲しむと思うんですよ!」


何で俺は涙目になっているんだ?


「…貴方が入ったって甲子園で優勝できる訳じゃないでしょう?」

「そんな事分かりませんよ!でも優勝できなくても…あいつは悲しまないと思うんです…夢をかなえる事より…夢に挑戦するほうが気持ちいいって言ってましたもん!」

「…」


俺の気迫に押されてか沼田教官はずっと黙っている。


「お願いしますよ!…あいつに挑戦させてやってくださいよ!一度…一度死んだ人間の…最後の希望なんですよ!…あいつの悲しんでいる顔もうみたくないんですよ…きっと耐えられないと思うんですよ…俺…」

「わかったわ…」

「!!」

「好きにしなさい…だけど貴方の言う挑戦とやらが終わったら…すぐにコースに入るのよ!」




















「あ〜あ、何で俺本音はいちまったのかな〜」


学校から寮への非常に短い通学路で俺様はそう呟いた。


「ん?どうしたの丸岩?」

「ん?ああその…いや、なんでもないよ」


あっそうと言いながら再び前を向く早乙女の顔を見てこいつは高く売れるなと思いカメラをセットしたが…途中でやめた。

今日は自分に素直になる日に決めたからだ。