第八話[ついに登場!?最強の普通!]

































「こらぁ!ちゃんと練習しろー!」


夏も近づきし5月、僕らは夏大出場に向けて猛練習をする…はずだが…


「キャプテン見るですぅ〜、トカゲさんですぅ〜」

「こっちにはアオダイショウさんもいるですぅ〜」



「あのー…」



「ローラ!すぐにパソコンで転送しろ!この写真は…この写真は…プレミアが付くかもしれん!」

「イエッサーネ!マルイワショウグンカッカ!」



「あのー…」



「ってやめんかこらー!」


歯切れの良い音と共に僕の手を離れた白球が緩いスライダーの軌道を描きながら丸岩の手の上にあるデジタルカメラを粉砕した。

うん、我ながら良いコントロールだ


「おまっ…ちょっ…これどーしてくれんだよ!?」

「黙れこの変態カメラマンが!」

「お前この中の写真売ったらいくらになると思ってたんだよ!?定価でも2000円はくだらない…否!オークションを開催すれば1万円を突破する事間違いなしの代物だぞ!チキショー!この借りはいつか返してもらうからな!」



「あのー…」



「ああっ!もう!この部に普通の人間はいないのか!?」



「いい加減気づいてくださーい!!!」
















「…で、君は要するに野球部に入りたい訳だね?」


いまや野球部のモニュメント的存在になった部室の机と彼を挟み僕はそう言った。


「はい!西木大輔!(にしきだいすけ)以前はシニアリーグに在籍していました!」


元気のいい事はたしかに良いんだが…


「いや…あのさ…」

「はい!なんでしょう!?」


僕は今聞くのも恐ろしくできる事なら聞きたくない質問を投げかけてみた。






「君さ…普通だよね?」






「ふ…普通だって!」


再び恋恋グランドに戻り西木君に挨拶をさせたが…皆の関心はそことは違うところに向いていた。


「お前!本当に普通なのか!?」


西木君に詰め寄る丸岩、いや興奮するのは分かるがもう少し押さえろ。


「いえ…その…自分では普通だと思っているんですが…」

「本当は凄くもてるとか無いのか!?」


丸岩…何か普通でない事を見つけようと必死だな…


「いえ…そこまでもてる訳では…」

「じゃあ…実はオタクとか!」

「いえ…そっちには興味が…」

「実はものすッごい金持ちだとか!」

「いえ…父は普通のサラリーマンです…」

「ええい!ホントに無いのか!本当は双子だとか!ええっと空手6段だとか!他には…笑いのセンスが変だとか!実は野球がものすっごくうまいとか!無いのか!?」

「ですから…僕はいたって普通の…」

「なんだ…普通か…」


急に愛想をつかせたように背中を向ける丸岩…何故か背中から哀愁が漂う。


「あっそういえば!」


西木君が何かを思いついたように手を叩く


「何!何かあるのか!?」


丸岩…目が輝きすぎ








「僕、硬筆3段でした」

「普通じゃねぇかーーーーー!!!」








こうして僕以外の突っ込み役で唯一普通な男性野球部員が誕生した…





硬筆三段も凄くないか?