第十三話[勝てる根拠とその実証]
恋0−1柚
2回の表、恋恋の攻撃は4番の葉桜から。
彼女の野球の実力は丸岩の折り紙つき、巧打、強打、好走、堅守。
何故恋恋で野球をやっているのか不思議なくらいだという。
早乙女以外の部員とも仲が良い。
カキィン…
右中間を破った後俊足を活かし三塁打とする。
無死三塁…同点の絶好のチャンス。
『5番、レフト、宝来坂さん』
私は軽く素振りをしながらバッターボックスに入る…自分でも両手が震えているのが分かる、もしかしたら顔も引きつっているかもしれない。
監督からのサインは…スクイズバント!
はっきり言ってそんなもの練習でもやった事が無い。
…でも同点の為だ早乙女を楽にするには仕方が無い。
相手の投手が動きの小さいフォームからボールを投げた…幸いど真ん中のボール。
…いける!
バットを寝かせボールに当てにいく。
…しかし、ボールはシュートの曲がりで下に落ちて行きキャッチャーのミットに納まった
シンカー持ってやがるよあいつ!
そしてそのまま飛び出していた葉桜がはさまれタッチアウト。
…一瞬の出来事だった
「監督…勝てるってどういうことですか?」
ベンチに帰ってくる葉桜を皆が迎えている頃湊が霧島にそう聞く。
「簡単な事ですよ…さっきの大具来くんの打撃を見ましたか?」
「はい…もうすぐでホームランと言う感じでした」
霧島はそれを聞いてニッコリと笑みを浮かべてまた言う
「そうです…あの打撃は大具来くんのベストスイングと見てもいいでしょうね…でも…ベストスイングでもあそこまでしか飛ばないんです」
「え?」
「柚元くんだって失投ぐらいはするでしょう、このチームには自分がベストスイングをしたときそれがほとんどホームランになる人が3人います」
霧島はそういって指を折りながら
「丸岩君でしょ…葉桜さんに、あとは宝来坂さん」
…前向きに…前向きに…
そう唱えながら打席に入る。
…ボールを叩き潰すように…ボールを叩き潰すように…
そう唱えながらバットを構える、丸岩がそういうバッティングをしろと言っていた。
ピッチャーが振りかぶってボールを投げる。
投げた瞬間相手が「しまった!」といった感じの顔になる。
真ん中高め…超絶好球!…叩き潰すように…バットを打ち下ろす!
コキィィィィン…
ボールは放物線を描きながら球場の外へと消えていった…
恋1−1柚